10年後の
リブワークス
Story of the future
今日も、いつものように5時に起床。約30年間起床時間は変えていないが、この10年で周りの環境は色々なことが変わっていった。まず朝起きてから最初にする習慣が窓の雨戸を開けることだったが、今や窓には雨戸もシャッターもない。5時になると窓ガラスの色が不透明から透明に変わり太陽の光を通し、外気温に合わせて最適な室温になるよう窓が開くことで、朝の訪れを教えてくれる。
また爽やかな音楽がベッドから流れ、心地良い目覚めを促してくれる。ベッドには健康診断計がついていて、一晩の睡眠状況と現在の健康状態が表示されている。
「よし、今朝も体調は良好だ」
その日の体調に合わせて、仕事の前にジョギングするのも日課の一つだ。
帰宅してからリビングに入ると、窓がディスプレイとなり昨日から今朝にかけてのニュースを放送している。コーヒーを飲みながら、朝の情報収集は欠かせない。
会社までは徒歩20分。車も自動運転となり乗れば5分で着くが、これも約30年間変わらず毎日徒歩で通っている。
今日の仕事のメインは、新規事業のディスカッションだ。10年前に新たなCIを掲げ、その一環として幾度もディスカッションを重ねてきたが、その形態もずいぶん変化していった。始めた当初は会議室に役員と管理職が集まって行なっていたが、今では新入社員からエルダー(嘱託)社員までがテレビ会議室システムでワイワイガヤガヤ行なっている。
思えば、10年前に始めた新規事業は本当に紆余曲折して進んできた。創業100年近く基本ビジネスの形態を変えていなかったから、当たり前と言えば当たり前か。新規事業を行なおうと声をあげた際、どこからどこまでが既存事業の延長線上で、どこからが新規事業なのかなんていうディスカッションから始まったのが、今となっては懐かしい。
10年前はお客様からご注文いただいたサッシやガラスの卸売りがメインだったが、こうしたディスカッションを経て、商品・販売先・販売方法がずいぶん変わった。窓はもちろんのこと、窓以外の生活空間に関わる知識や技量が急激に上がった。我々は、自分たちのやり方で「生活空間を良くするプロ」となったのだ。
夏は暑くて冬は寒い生活空間を快適にする高機能な“製品”や“サービス”をもっと広めたい。これを実現するためにビジネスパートナーや既存取引メーカーに加え、海外新興メーカーとも議論を重ねた。10年前に中国の深圳視察に行ったことがきっかけで、海外新興メーカーと一緒に仕事が出来るようになったのは大きな収穫だった。彼らは我々の意見を真摯に聞いてくれ、小ロット短納期で製品を改良してくれる。
10年前にはAIとかIoTとか言われ始めていたが、いずれも当たり前のものとなった。従来の窓一つとっても、はたして窓なのか雨戸なのか、ディスプレイなのか空調機器なのか、もはやカテゴライズできないほど多岐に渡って使用されるようになった。当社にとって、商品をお客様にもとに届けることが仕事の終わりではなく、届けたうえでIoTやAIとして機能させるよう設定することも重要な仕事となった。10年前には隆盛を誇っていた大手家電量販店でも、この流れに乗れなかったところは衰退してきている。
10年以上前に取り組んでいた窓のリフォームは、老朽化した窓を新しいものに変える、また断熱性の高い窓に変えるという仕事であったが、今はこれに加えて窓のIoT化・AI化対応が当たり前となった。現在当社では、窓の多機能化リフォームが主力事業、稼ぎ頭となっている。
コンストラクション(現場施工)社員の働き方も、昔から比べたら様変わりした。かつては夏の建築現場の暑さは大変だったが、今では作業着内の暑さを自動感知して温度調整してくれる薄手の作業着が開発され、暑さはほとんど気にならなくなった。そして筋力勝負だった現場作業は、今では超小型パワーアシストロボットがあるので体を痛めることはほとんどない。現在コンストラクション(施工社員)社員は、ロボットでは出来ない繊細な技術を駆使する仕事を担っている。当社では、人間とロボットが共存共栄できる職場を形成することが出来たのは、大きな進歩だったと思う。
この10年の回想録になってしまったが、今日の新規事業ディスカッションは、初期段階のアイデア出しである。若い社員の発想の柔軟さは魅力的である一方でまだ荒削りな部分が多いため、ベテラン社員の経験や知識でサポートして一緒に磨き上げて具現化していく。こうした取り組みが、生活空間について自由に考える社風の原点となっている。
40代、50代となると、親の介護や子育てでフルタイム働きづらくなる人が出てくるが、早い段階でテレワークに取り組んでいたおかげで会社を辞めずにすみ、経験や知識を存分に活用してくれている。
今日の新規事業ディスカッションで出てきたアイデアの中には、いくつか面白いものがあった。ベテラン社員が具現化へのアドバイスをしていたが、まだまだ超えなければいけないハードルがいくつもある。今日、テレビ会議に出席していない社員に発信して、解決策を模索してみよう。